なぜ批判?実話に基づく映画『グリーンブック』黒人差別の時代背景と感想

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まっちゃん.
こんにちは。まっちゃん.(@futtekonai)です。

今回は、映画『グリーンブック』を紹介します。

日本では2019年3月1日から公開されています。

アラサー女子
このあいだ、第91回アカデミー賞で作品賞を受賞した話題作だね!
まっちゃん.
そう!子どもから大人まで、笑って泣けてハッピーな気持ちになれるコメディです。

でも、白人と黒人の描き方を巡っては批判の声も…。

『グリーンブック』の時代背景や、批判の理由も簡単にまとめてみました。

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映画『グリーンブック』のあらすじ

イメージ画像(車)

白人&黒人コンビのロードムービー

舞台は1962年のアメリカ。ナイトクラブの用心棒をしているイタリア系アメリカ人のトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、口が達者で陽気な人たらしのおじさん。

勤め先の都合で無職になったトニーは、ある仕事を紹介され、愛する家族を養うために不本意ながら引き受けます。

その仕事とは、約2ヶ月のコンサートツアーに出かける天才黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)のドライバー兼用心棒。

行き先は、露骨な黒人差別が公然と行われているアメリカ南部です。

最初は差別主義者だったトニーですが、シャーリーが受ける黒人差別の現実を見るうちに次第に変わっていきます。

一方、「白人でも黒人でもない」という特殊な境遇にあり孤独だったシャーリーも、道中の悲喜こもごもを通じてトニーから大きな影響を受けます。

「白人と黒人」という違いだけでなく「庶民とセレブ」「無学と高学歴」「デタラメと真面目」と、何もかもちぐはぐな二人が化学反応を起こす、笑って泣ける友情物語です。

映画に出てくる「グリーンブック」とは?

「グリーンブック」とは?

さて、映画のタイトルになっている「グリーンブック」とは何なのでしょうか?

グリーンブックは、かつて人種隔離政策が行われていた頃のアメリカで1966年まで刊行されていた、黒人向けのガイドブックのこと。

黒人が利用できるレストラン、ホテルなどが掲載されています。

映画では、このグリーンブックを携えて南部のコンサートツアーに出かけます。

 

白人ドライバーのトニー、黒人ピアニストのシャーリー、そして一緒に演奏するトリオのメンバー(白人)は、基本的に同じホテルに泊まります。

しかし、郡や州によってはそれができないので、シャーリーだけ黒人向けの宿に泊まらなくてはなりません。

白人が一方的に決めた棲み分けルールを守らないとトラブルの元、という時代だったのです。

「ジム・クロウ法」とは

グリーンブック創刊の背景には、「ジム・クロウ法」があります。

ジム・クロウ法は、有色人種の自由な公共施設利用を制限する法律で、レストラン、トイレ、公共交通機関の席などは白人用と黒人用が分けられていました。

しかも、ただ分けられていただけでなく、黒人用は粗末な施設です。

映画内にも登場しますが、シャーリーは一流の演奏家として迎えられるのに、

黒人であることを理由に掘っ立て小屋のようなトイレを案内されたり、楽屋とは名ばかりの倉庫に通されたりします。

映画で描かれた1962年は、有名なリンカーンの奴隷解放宣言から100年も経っていますが、黒人差別は根強く残っていました。

まっちゃん.
黒人差別の歴史を知る、入りやすいきっかけとして、ぜひ小学生・中学生・高校生に観てほしいな〜。

1960年代は公民権運動の最盛期

ちなみに、この映画の時代の前後にあった、公民権運動に関する有名な出来事をざっくりピックアップするとこんな感じ。

  • 1954年:ブラウン判決(白人と黒人で学校を分けることを不平等とする判決)
  • 1955年:バスボイコット運動(黒人が、白人席を設けていたバス乗らないことでバス事業に経済的ダメージを与え、人種差別に抗議)
  • 1963年:キング牧師の「I have a dream」演説(ワシントン大行進)
  • 1964年:公民権法が成立
まっちゃん.
公民権法ができたらから万事解決、というわけではありません。

私が最近観た映画に『デトロイト』(2017年)がありました。

デトロイトで起きた黒人による大規模暴動の中で、白人警察官らが黒人青年らに暴行を伴う執拗な尋問を行い3人を死亡させた、という実話を基にした作品でした。

この事件が起きたのは、公民権法の成立から3年後の1967年でした。

映画『グリーンブック』の率直な感想は「面白い!」

イメージ画像(ケンタッキー)

ケンタッキー食べたくなる映画

前置きが長くなりましたが、映画『グリーンブック』の率直な感想は「面白かった!楽しかった!」に尽きます。

デタラメ上等でガサツなトニーと、知性に溢れ気高いシャーリーの食い違いっぷりが、テンポのよいセリフと編集で繰り広げられます。

中でも面白かったのが、ツアーの道中でケンタッキー州を走るシーン。

ケンタッキー・フライドチキンを巡るやりとりに、声を出して笑ってしまいました。

トニー・リップ/バレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)

「おい見ろ!!ケンタッキーだ!!!」と大はしゃぎするトニーは、デタラメなのに憎めない彼のキャラクターが全開。

夜の世界で上手く世渡りする術を身につけながらも、天真爛漫さは少年のまま大人になったオッサンです。

だからみんなトニーを好きになってしまうんだなぁ、と納得してしまいました。

コンサートのシーンでは、最初は黒人だからと見下していたシャーリーの演奏を聞いて、すごいものはすごい!と素直に受け入れます。

それもトニーの魅力でした。

まっちゃん.
WOWOWでやってたアカデミー賞授賞式で、トニー役のヴィゴ・モーテンセンを見たのですが、「えっ?本当にこの人?」ってビックリしました。

顔つきが全っ然違う。

運転中に窓からからジュースをポーイ!する無邪気なオッサンと同一人物とは…。

 

『グリーンブック』のトニーは、シャーリーを救う存在として描かれていると言えます。

南部の白人の露骨な黒人差別に対して、トニー流の痛快な反撃を繰り出してシャーリーを守り、旅を通じてシャーリーの孤独も癒やしていきます。

南部の白人は全員悪人ポジションなので、ヒーローが悪を倒すシンプルな構図。

普段はかっこよくないトニーが一転して頼もしい存在になるのは、ワクワクします。

しかし、白人のトニーが黒人のシャーリーを救うという描かれ方には批判・疑問が集まっています。詳しくは後述。

ドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)

マハーシャラ・アリが演じるシャーリーは、まるで王様のような風格があり、一目見ればシャーリーのカリスマ性が伝わってきます。

ケンタッキーのくだりでは、彼の仕草が上品であるがゆえに可笑しく、かわいく見えて、ニヤニヤしてしまいました。

シャーリーはトニーの雇い主。トニーの行いが悪ければピシャリと指摘して譲らない頑固さも魅力のひとつです。

トニーのほうが年上に見えるのですが、シャーリーに怒られると超しぶしぶ従います。これもじわじわ面白い。

 

一方、孤独と信念の間で揺れるキャラクターとしても、とても魅力的です。

シャーリーは「白人でも黒人でもない」居場所のなさ、心を許せる家族・仲間のいない寂しさを抱えています。

映画を観ながら、「公然と黒人を差別する白人が、なぜ黒人ピアニストの演奏を聞きに来るのかな?」と思ったのですが、

その理由もシャーリーのセリフで明かされます。

シャーリーがなぜ黒人差別の根強い南部を巡るのか?の答えと併せて、強い信念を感じました。

トニーの奥さんがいい!

ちなみに、トニーにはイタリア系の一族がいて、かわいくて良妻賢母な奥さんがいます。

トニーは長く家をあけるので、奥さんの登場シーンはすごく多いわけではないのですが、間違いなくこの映画を楽しく後味よくしてくれているなぁと感じました。

容姿だけの話ではないです。直接会ってないシャーリーに向ける親愛の気持ち。爽やかな気持ちになるオチ。

どういうことなのかは、ぜひ劇場でご覧ください。

まっちゃん.
一家が昼ごはんに大量のパスタを作って、ワインと共に食卓に並べて食前に祈るシーンは、まんま『紅の豚』のピッコロ社やん…!とテンション上がりました。

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映画『グリーンブック』への批判の理由は?

イメージ画像(ピアノ)

批判も含めて作品から学びたい

映画『グリーンブック』は笑って泣ける親しみやすい物語として観ることができますが、一方で批判の声もあります。

前述の通り、作中では白人のトニーが黒人のシャーリーを救う存在として描かれている、と言えます。

私は初めて知ったのですが、映画の世界には「白人の救世主」「魔法の黒人(マジカル・ニグロ)」という言葉があるそうです。

映画における白人の救世主(英語: white savior)とは、白人が非白人の人々を窮地から救うという定型的な表現である。その表現は、アメリカ合衆国の映画の中で長い歴史がある。白人の救世主は、メシア的な存在として描かれ、救出の過程で自身についてしばしば何かを学ぶ。

引用元:ウィキペディア

 

マジカル・ニグロ(Magical Negro)は特にアメリカ映画において白人の主人公を助けに現れるストックキャラクター的な黒人のことである[1]。しばしばすぐれた洞察力や不思議な力を持った存在として描かれるマジカル・ニグロはアメリカにおいて長い伝統を持つキャラクター類型である[2] 。

しかし、現代に入ってもこうした摩訶不思議なキャラクターが使われ続けることに不快感を表明する者が多く、アメリカの黒人社会はその代表的存在である。2001年にもワシントン州立大学とイエール大学で映画論を教えるスパイク・リーは、大前提であるかのようにマジカル・ニグロを手法として使い続けるハリウッドに肩を落としている。

引用元:ウィキペディア

スパイク・リーは黒人で、『グリーンブック』とともにアカデミー作品賞にノミネートされながら惜しくも受賞を逃した『ブラック・クランズマン』の監督です。

『グリーンブック』が選ばれたことに、信じられない!というリアクションだったと報じられていました。

 

『グリーンブック』への批判について、こんな解説がなされています。

まず、差別や不寛容を描くハリウッド映画にあまりに頻出する「白人の救世主」迷信を、ますます広めるものだという批判がある。

(中略)

ほかにもこの映画については、アリ演じるシャーリーの描き方が、いわゆる「魔法の黒人」的ステレオタイプだという批判もある。つまり、白人により良い変化をもたらすためだけに登場する、便利な黒人キャラクター扱いだというのだ。

引用元:BBC 「グリーンブック」の作品賞受賞に異論噴出 米アカデミー賞

批判にさらされる理由は、他にもつっこまれどころがあるようですが…。

 

こういう批判の声に「感動したのに、なんだかガッカリ…」「悪い作品なの?」と考える人もいると思います。

魅力的な二人のテンポのよいやりとりの面白さ、年齢を問わず楽しくわかりやすく観れること、実際にあった黒人差別の歴史を伝えることなど、この作品の良さはたしかにあります。

私にとっても『グリーンブック』はもう一度観たいと思える作品ですが、

「白人の救世主」「魔法の黒人」を知らなかったこと、「この描き方は本当にフェアか?」というセンサーが働かなかったことは、恥ずかしいなと感じました。

なぜ批判されているのかにも触れることで、より価値のある映画体験になるのではないでしょうか。

映画『グリーンブック』の上映館・映画館

イメージ画像(グリーンブック)

イメージ画像(グリーンブック)

『グリーンブック』は批判の声も含めて、話題の作品です。

デートで観るもよし、親子で観るもよし。卑猥な描写もないので安心です(トニーのお行儀は悪いけど)。

「『グリーンブック』を映画館で観たい!」という方は、公式サイトでチェックしてみてください。

>>映画『グリーンブック』公式サイト 上映館一覧

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ABOUTこの記事をかいた人

30歳を過ぎてから映画の面白さに気づき、旧作を中心にWOWOW・BS・地上波・Amazonなどで鑑賞。映画の感想をゆるく不定期につぶやきます。2019年の目標は毎月新作1本旧作10本。月間1.6万PVのブログ運営中。|本業は企業・開業医・個人のWebサイトのコンテンツを取材執筆するフリーランスライター。 |1986年生