なぜそう思うのか?自分の本音を知るために、信頼するセラピストのあなざわゆきさんの「未妊セラピー」を受けた。
事前カウンセリングで、子どもを持つことへの不安について聞かれた際、私の口を衝いて出たのは女だらけの世界(ママの世界)への嫌悪感だった。
ネガティブな思いは、過去のどんな体験から湧き上がっているのか?セラピーを通じて見えてきたのは、高校時代の部活での人間関係のつまずきだった。
「共感や同調が時にネガティブな力として働く女の世界は、できれば避けたい」と思うようになる、一つのきっかけだったことがわかった。
▼前回までの記事を読む▼
妊活中なのに、子どもはそれほど…。原因は高校時代のトラウマだった(1)
妊活中なのに、子どもはそれほど…。原因は高校時代のトラウマだった(2)
妊活中なのに、子どもはそれほど…。原因は高校時代のトラウマだった(3)
トラウマのシーンの私を助ける
あなざわさんに導かれて、高校時代のトラウマのシーンを、「31歳の私」という冷静な目線から振り返った。
今までこの事件について、あまり人に話したことはなかったと思う。
身勝手な行動をとった自分を、恥じる気持ちがあったからだ。
セラピーを通じて、恥じる気持ちよりもっと根深く刻まれていた、ネガティブな思い込みを解放できた。
- 今後も、自分が「これがいい!」「やりたい!」と思って振る舞うと、また知らないうちに下手こいて、嫌われるんじゃないか。
- 「共感」や「同調」が力になる女の世界は、できれば避けたい。
ネガティブな思い込みを解放したら、次のステップとして、それをポジティブなものに書き換えていく。
トラウマのシーンにいる高校生の私を、31歳の私が助けてあげるのだ。
あなざわさんは、こんな言葉で導いた。
「高校生の自分に、どんなことをしてあげたいですか?
どんな言葉をかけてあげたいですか?」
トラウマのシーンの辛そうな私を、安心させてあげるには、何をしてあげればいいのか…。
うーん…と考えた結果、
高校時代の音楽室がどれだけ小さな世界かを、教えてあげようと思った。
音楽室を離れた後の人生に、遠慮なく私でいられる世界がちゃんとあることを、伝えたかった。
そうだ。
その世界を象徴する、「あの人」の写真を渡してあげよう。
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クセがすごい、俺様カメラマン
「あの人」とは、前職の地方民放テレビ局時代にとてもお世話になった、ベテランカメラマンだ。
一言では言い表せない、まさに「クセがすごい」人だった。
まず、ファッションセンスが独特だった。
堅気の他人の人間には見えない…というと言い過ぎかもしれないが、
とりあえず会社員には見えなかった。
ある日、「おはよう」と声をかけられて、振り返ると、「I LOVE 洗車」と書かれたキャップを被っていた。
(出勤中にガソリンスタンドの人が被っているのを見て、気に入って、どうにか譲ってもらったらしい。
そんなのアリなのか…と驚いた)
ジャケットのボタンを、かわいいキリン柄のくるみボタンに変えるような、おちゃめな一面もあった。
長身で細身で、何を着ても自分のものにしていて、おしゃれだった。
そして何より、他の追随を許さない、オンリーワンのカメラマンだった。
彼の撮影・編集の腕は、他のカメラマンやディレクターとは次元が違っていた。
彼が関わったニュース、特集、番組には、
「よくわかる」とか「上手い」とか「きれい」の先の、圧倒的な「俺」の世界があった。
多彩な取材経験、豊富な読書量、人情、哲学、美的センス…。
これらを総動員して、取材対象や社会を自分なりに捉え直して、表現していると感じた。
「俺俺しているのは、ニュースとしてどうなのか…?」という見方もあるけれど、
なるべく正しいお作法に則ったニュースは、NHKがやってくれるのだから、
地元発祥のローカル局には、それくらい個性爆発の作り手がいたほうが面白い。
「派閥」というわけではなかったけれど、彼を中心とする一派に、私は入社当時からずっとかわいがってもらった。
取材や撮影・編集のことなど、いろんなことを学ばせてもらったし、
よく飲みに連れて行ってもらった。
とても面倒見が良い人で、カメラマンとしても、人としても、大好きだ。
私が会社を辞めた今も交流が続いている。
やりたいことを遠慮なくぶつけ合えた
このベテランカメラマンとは、お互いやりたいことを遠慮なくぶつけ合う関係を築けた。
こんなことがあった。
2011年、東日本大震災の発生から間もない頃のこと。
被災地から遠く離れた四国・徳島では、各地で有志が被災地支援活動に乗り出していた。
ベテランカメラマンとディレクターの私は、各種支援活動を紹介する特集を編集することになった。
活動の一つに、地元のバレエスタジオが公演で義援金を集めた、というものがあった。
震災直後で自粛ムードが漂う中、悩んだ末に公演決行と義援金募集を決断したそうだ。
日本全体が、「被災地のために何かしたい」と、もどかしさを抱えている時期だった。
公演を撮影してきたのは、当のベテランカメラマンだ。
指先、つま先まで美しい少女たちの踊りが映像に収められていた。
取材映像を見ていると、なぜか公演後の夜空を撮影したカットがあった。
公演日は、偶然にも満月だった。
(実は私も公演を見に行ったが、全然気づかなかった)
そして、彼は編集の手を止めて、私に言った。
「この映像に、こういう原稿を入れてくれ。
『少女たちの思いよ、電線に乗って、東北まで届け』って」
よく見ると、満月の映像には、電柱と電線も映っていた。
ただきれいなだけではなく、被災地とつながる、という意味が込められたカットだったのだ。
「被災地のために何かしたい」という人々の心情を代弁しているようにも見えた。
でも、私は首を縦に振らなかった。
「いいカットですけど、その原稿はだめです」
非常に細かい指摘になるが、四国と東北の電線は「つながっていない」のだ。
西日本と東日本は電気の周波数が違うし、変換して送電することも難しい。
ちょうど、計画停電や電力融通のニュースでその話題が出ていた時期だった。
せっかく撮れた美しい映像を前にして、こんな指摘は
重箱の隅をつつくようでナンセンスだ、というのは重々承知だ。
しかし、その原稿でいけば、
「報道機関が事実誤認して原稿を書いている」と捉える視聴者がいるかもしれない。
私は、技巧を凝らした表現より、正確な表現を選ぶべきだと主張した。
これに対して、ベテランカメラマンの答えは「No」。
お互い一歩も引かず、こう着状態に陥った。
オンエアは当日だ。早く決めないと、間に合わない。
結局、上司に判断を仰いで決着をつけて、なんとか編集を再開した。
あれから7年近く経つが、ベテランカメラマンとお酒を飲むと、
「まっちゃん.といえば…」と、このエピソードを語られる。ほぼ毎回だ。
「俺の言うこと、全然聞き入れてくれんで、まいったぞ!」と、嬉しそうに話してくれる。
私が全力で自分の主張をぶつけたことを、とても喜んで、思い出にしてくれているのだ。
私も、親子ほど年齢が離れている新人の言うことをねじ伏せずに、
対応に扱ってくれたことが、とても嬉しかった。
私にとって大切な人間関係は、こっちだ。
私は、女だらけの世界では、上手くやれないかもしれない。
でも、そんなことは私にとって大して重要なことではない。
女だらけの世界で上手くやることよりも、
自分のままで全力でぶつかれる人間関係にフォーカスしていればいいのだ。
そう考えれば、子どもを持つことへの不安がやわらぐ。
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「大切な人だけ見とけばいい」
トラウマのシーンにいる高校生の私を助けるために、
イメージの中で、ベテランカメラマンの写真を「お守り」として手渡した。
「将来、あなたの思うままに振る舞える人間関係が待ってるから、安心して。
あなたにとって大切な人だけを見とけばいいから」
こう伝えると、辛そうだった高校生の私は、
100%ではないにせよ、納得してくれたようだった。
落ち着いた表情に変わっていた。
(終わり)
最初は前編・後編のつもりだったのに、書いてみると全4回にもなって、けっこうハードでした…(笑)。
特に、第3回は激しく消耗しました。
それでも、セラピーでやったことを消化するために、アウトプットは非常に効果的だったし、
私のブログを読んだ人が、「私の場合はどうなんだろう…」と考えを巡らせてくれたことが
何より嬉しかったです。
セラピーでお世話になったあなざわゆきさんも、内容確認等でご協力いただき、ありがとうございました!
次回からは、ゆるい話題になります。引き続きお読みいただけると、励みになります。
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「未妊セラピー」体験記、いよいよ完結編です!
妊娠マインドをさまたげる原因のトラウマを、成仏(?)させていきますよ。